2019.01.13

古材の天板を選ぶ際に注目したい3つのポイント

店舗の内装をリノベーションしたり、木製の備品などを作ったりするとき、古材を使うケースが増えています。古材とは「こざい」と読み、字の通り古い材料をあらわす総称です。

 

例えばダイニングテーブルなどを作る場合、その天板に古材を用いることもできます。「そもそも古材とはなにか」「古材を選ぶときのポイントは」「新しい木材との違いはなにか」など、古材について解説します。

 


【目次】

1.古材はその特性上、個体差が大きく出てしまいます
2.古材の選定ポイント(1):その材のストーリーを知る
3.古材の選定ポイント(2):なるべく、多くの材を目で見比べる
4.古材の選定ポイント(3):こだわりの一枚を見つけるまで妥協しない
5.結論、古材の選び方は「フィーリングが合うか否か」
6.古材の魅力を理解して、オンリーワンを手に入れよう

 

 

1.古材はその特性上、個体差が大きく出てしまいます

古材とは、古い材のこと。主に木材のことです。古材には「時間が染み込んでいる」といわれます。民家で長年使われていた木材には、その年数に比例した「味」があるという考え方です。たとえば床に刻まれた傷や割れ、何かがぶつかって削れた柱など、それぞれの古材に独特の風合いがあります。これは新しい木材にはないものです。そのため古材には、個体差が大きく出てしまうのです。

 

 

2.古材の選定ポイント(1):その材のストーリーを知る

古材と一般的な建築に用いられる新しい木材は、何が違うのでしょうか。
まず材の持つ強度やデザインなど、表に現れる部分に違いがあります。また見えない部分としては、その歴史にも違いが現れるのです。

 

古材には、一度民家や建物の一部に使われていたという事実があります。実際に人の生活を支えてきた、実績のようなものが備わっているのです。

そのため、誰がいつ、どこで、どのような状況で使用していたかを知ることは、古材を選ぶ際の判断材料となります。古材の歴史に思いを馳せることで、より一層、愛着を持つことができるからです。

 

戦前、民家を解体したあとには、多くの人が集まり古材を持ち帰りました。それぞれ再利用するためです。なかには古材のみを使って、新たに家を建て直すケースもあったといいます。これは「ものを大切にする精神」が根底にあったからです。そのため多くの古材には、何度も使われた形跡がありました。

戦後になり、日本では建築ラッシュが始まります。効率化とコスト削減を実現するために、外国の安い木材が多く輸入されるようになりました。日本の木材は、長い時間をかけて自然乾燥させていたので、非効率という評価をうけてしまい、次第に使われなくなったといいます。この時期の古材の多くは、不要物として扱われており、燃やされたり、捨てられたり、細かく粉砕された後にチップとして再利用されたりしたのです。


現代では、リサイクルの大切さが叫ばれ、あらゆる資源の再利用がすすめられています。古材に関しても価値が見直されているのです。このように古材が辿った歴史に耳を傾け、その価値を再確認することは、古材選びにも役立ちます。

その上で、古材を未来へつなげていくことも大切です。古材を活用するメリットのひとつがエコにあります。新たに木材を得ようとしたら、森林伐採はさけられません。森林伐採は、地球環境の悪化に影響を与えているとも言われています。例えば家を新築する時、その数%を古材で賄うだけで、CO2削減に大きく貢献すると言われているのです。

 

歴史を知り、また新たに歴史を刻んでいくことは、古材を活用する醍醐味のひとつだと言えるでしょう。

 

 

3.古材の選定ポイント(2):なるべく、多くの材を目で見比べる

古材には、一般的な定義が存在します。古いものはすべて古材というわけではありません。古材と認める定義とは、「築50年~70年以上前の民家から取り出した良質の木材であること」です。

古材は古いものですが、ゴミではありません。例えば骨董品は古いほど高値がつくこともありますが、古材にも似たような特徴があるのです。

 

また古材には、「活用してこそ価値が生まれる」という考え方もあります。材木として加工し、店舗の内装や木製の備品などに使うことで、価値を見出すのです。

このように古材の価値は、受け取る人によって変わり、安定しないことがあります。そのため、理想にピッタリの古材を選ぶときには、なるべく多くの材を見比べると良いでしょう。

 

古材には、同じものは存在しません。ひとつひとつ違う表情をしているのです。たとえば天板などに使いやすい一枚板の場合、木目やちょっとした傷の状態もさまざま。同じ種類の木だったとしても、全く異質の木材に見えることがあるほどです。これは新しい材木であっても感じる特徴です。しかし古材のように長い時を経た場合、特に大きな差を実感できるでしょう。

 

材木に違いがあれば、当然適した使用用途も異なるものです。戦前の大工は、木材の本質を見抜く目が優れていたと言われています。たとえば家を一棟解体する現場を訪れた大工は、必要な木材だけを見抜き、持ち帰って、それだけで新たに家を建てられるという程です。

 

古材は、当然木の種類によっても特徴が異なります。たとえばケヤキの木は硬くて加工がしやすいので、家の中でも意匠部分によく用いられました。また高床式の倉庫などを作る際には、湿気に強い栗の木が、柱部分に使われたといいます。古材を再利用する際には、その利用用途に応じて、適切な種類の木を選ぶことも必要です。

 

古材は、どのように使われてきたかによっても、見た目が変わります。

 

古来より伝わる燻煙乾燥(くんえんかんそう)という木材加工法。これは、昔から民家にあった囲炉裏を利用した加工方法です。囲炉裏から立ち上る煙が、梁(はり)や柱を燻して乾燥させる効果があります。木材が乾燥すると、防腐効果や防虫効果が期待できるのです。

例えば合掌造りで知られる白川郷。かやぶき屋根で作られた民家の中心には囲炉裏があり、家全体を燻煙乾燥する仕組みになっています。燻された木材は強度が増すので、家の骨格を強固することに繋がるのです。このようにして、豪雪や地震に耐えうる設計を実現しました。

 

古材を探していると、いぶされて黒ずんだ古材にめぐりあうことがあります。また、経年劣化で割れたり、何かの理由で傷ついたりした古材を目にすることもあるでしょう。これらは古材の持ち味です。多くの古材を見比べることで、マッチするオンリーワンの古材を見つけてください。

 

4.古材の選定ポイント(3):こだわりの一枚を見つけるまで妥協しない

テーブルやカウンターの天板に使える古材の価格は、新しい木材より高価になりがち。なぜなら古材には、希少価値や付加価値が含まれるからです。古い資源は数が多くありません。また、時の流れが生み出す「味」にも価値が生まれます。海外では昔から、古材に人気がありました。盛んに売買が行われるため、マーケットも確立しています。

 

対する日本では、古材が市場に出回ることは稀です。空き家を解体した時に発生する古材の多くは、廃棄していました。なぜ日本の古材は、一般に流出しないのでしょうか。

 

理由はいくつかありますが、一番の原因は古材の価値が認められていなかったことです。価値が認められていないので、流通システムも確立されません。たとえ古材のニーズがあったとしても、マーケットが小さいため、必要な人に行き渡らないのです。

近年では日本でも、古材の価値が認められはじめています。一部の組織が古材の基準を定めたことで、安定した価格設定も実現しました。流通経路も整い、古材を専門に扱う材木店もあるほどです。

 

そんな状況の中、理想の古材を見つけるためには、妥協しないことが大切。

 

たとえば木材に強度を求める場合、ある程度の厚さが必要です。しかし古材であれば、新しい木材より薄くても、同等の強度を保つことができるでしょう。もともと古材は新しい材木より頑丈だという分析結果があるからです。

 

木材には、乾燥させることで強度を増す特性があります。例えば100年育った樹木を伐採した場合、100年後が強度のピーク。その後数百年をかけて伐採時の強度まで低下するといわれています。このように古材は、長時間かけて自然乾燥するから頑丈なのです。

ところが、現代の新しい木材の場合、強制的に乾燥させる傾向があります。強制的に乾燥させると、確かに短時間で強度は増すのですが、樹木の油が抜け出てしまい、パサパサするのです。結果、木としての弾力がなくなり艶も消えてしまいます。また強制的に乾燥させた木は、将来古材として再利用できない場合がほとんどです。調湿効果や耐震制度も劣化してしまいます。

 

つまり長期間、自然乾燥した古材は、強制的に乾燥させた新しい木材より質が良いといえるのです。

古材を選ぶ際には、デザイン面はもちろん、強度などの内面にまでこだわるとよいでしょう。たった一枚の古材を選ぶだけでも、妥協しない根気が必要です。

 

5.結論、古材の選び方は「フィーリングが合うか否か」

古材を手に入れる方法は様々あります。現代では、建材専門のリサイクルショップや廃材を流通させるネットワークが確立されているからです。インターネットを介して、これらのホームページから古材を購入できます。

 

また、実際に民家の解体現場に足を運んで、古材をゆずってもらう方法もあります。解体業者に声をかけて、お願いするのです。ポイントは、できるだけ解体業者の仕事のジャマにならないように気を使うこと。休憩時間に話しかけたり、飲み物などを差し入れたりしましょう。突然話しかけると邪険に扱われるかもしれませんが、誠意を持ってお願いすれば譲ってもらえるかもしれません。

 

どのような手法で古材を手に入れたとしても、最終的にはフィーリングが重要。古材の魅力の感じ方は人それぞれだからです。ひとつの古材を見ても、気にいる人と、ピンとこない人がいます。そのため、他人がどう言おうと、自分の直感を信じることが大事です。

 

苦労して手に入れた古材は、丁寧に処理することで魅力が増します。汚れている場合は、水洗いをしてから、じっくり乾燥させてください。用途によっては加工をしたり、カンナやヤスリで磨いたりすることも必要です。

 

このように時間や手間、お金をかけて自分好みに加工することも、古材の魅力のひとつだといえるでしょう。

 

 

6.古材の魅力を理解して、オンリーワンを手に入れよう

古材は、一つひとつが異なる魅力を持つ木材です。傷や割れ目があっても、それが魅力となります。また、新しい木材と比べても、強度が勝っていたり、柔軟性が秀でていたりする特徴があるのです。しかし、古材は数が多くありません。そのため、マッチする古材を手に入れるには、じっくりと時間をかけて探す必要があるのです。

あなたがお気に入りの一本一枚と出会えることを願っています。